学会発表

氏名 小椋 純一
氏名(カナ) オグラ ジュンイチ
氏名(英語) OGURA Junichi

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発表タイトル

比叡山山麓近くの黒色土層について

単独・共同の別

単独

学会・大会名名称

日本植生史学会

発表場所

豊橋市自然史博物館

発表年月日

201912

国内外の区分

国内

概要

京都市の北東、比叡山の山麓に近い林道沿いの法面において黒色土層が見られるところがある。黒色土からは通常比較的大きいサイズの微粒炭が抽出され、それによりその土壌採取地点における過去の植生や、植生に対する火の影響についての情報を得ることができることが多い。そのため、その黒色土層から微粒炭の抽出を試み、その地の植生史を考えることにした。
 その黒色土層の厚さは30cmほどあり、その下方から5cmごとの間隔で土壌を数十gずつ採取した。また、その黒色土直上の非黒色土も5cmごとの間隔で4点採取した。黒色土のC14年代の測定結果は、最下層部が7490±30yrBP(PLD-38565)、最上層部が4570±25yrBP(PLD-38566)であった。
 採取した土壌試料は,それぞれ2gを常温の室内で水酸化カリウム溶液(10%・48時間)、過酸化水素(6%・12時間)、フッ化水素酸(40%・24時間)により処理し、125μmのメッシュの篩に残ったものをプレパラートとして顕微鏡により観察することにした。125μmのメッシュの篩に残る微粒炭を観察対象にするのは、小さな微粒炭は遠方から飛んできたりすることもあるため、土壌採取地点で燃えてできた微粒炭を観察の対象とするためである。
 ところが、その方法では、黒色土層からはほとんど微粒炭が得られなかった。そこで、125μmの篩を通った処理水中に微粒炭が含まれていないか調べてみたところ、そこには約0.1mmよりも小さな微粒炭が多く含まれることを確認することができた。その微粒炭を落射顕微鏡で観察することにより、草本起源と思われるものが多く含まれている可能性が高いことがわかる。その微粒炭は大きさが比較的小さいことから、土壌採取地点で生成されたものでない可能性が小さくないこと、また年代測定時のδ13Cの値(-24‰前後)から、多くがC3植物起源と考えられる。
 一方、黒色土層直上の非黒色土からは、約0.1mmよりも大きい微粒炭がある程度抽出された。それらの微粒炭には、顕微鏡観察により木本起源のものが少なからず含まれていると考えられる。