本書は、日本人英語学習者を対象としたフォーミュラ(定型表現・連語・コロケーション)の処理・習得と親密度に関する6年間に及ぶ大学横断的共同プロジェクトの研究成果をまとめた入門的研究書である。フォーミュラを卒論・修論で研究したいという学生や研究入門者を想定し、フォーミュラを入門的に解説しつつ、親密度(横川(編), 2006)の知見を組み入れた独自の実験用・教育用リストの作成経緯と研究成果について紹介し、それを活用した研究事例や、フォーミュラの教育応用・理論的展望などについて説明するものである。
第1部 第1章「フォーミュラの定義」、第2章「フォーミュラの役割」および第4部第2章「親密度、出現頻度がフォーミュラの認知処理に及ぼす影響」を担当。第1章では、フォーミュラ(定型表現)の基本的概念をその定義と分類を通して概観し、フォーミュラ処理に関わる諸要因について第一言語(L1)および第二言語(L2)の観点から考察した。第2章では、フォーミュラの言語使用における役割と意義について、母語獲得および外国語学習の観点から考察し、フォーミュラの一つの特徴とされる処理効率性について L1 および L2 研究の知見をもとに報告した。第4部第2章では、英語学習者の主観的指標であるフォーミュラ「親密度」と英語母語話者のBNCコーパス内の客観的指標である「出現頻度」が、フォーミュラの認知処理にどのように影響を与えるのかを心理学実験ソフトを用いた行動実験データに基づいて検証した。