美術作品は、いまとは異なる時代、こことは違う場所へとつながる扉を開く鍵となります。例えば、いまはいない人が残した作品から、当時の人の思考や社会を知ることができます。また違う国の人が作った作品から、自分とは異なる価値観や知らなかった歴史を知ることもできるでしょう。
遠い地域や違う時代の人たちのことに思いを馳せ、その考えや価値観に触れること。またそれらを通して過去や未来の自分に想像を巡らせることは、目の前にあっても気づけていない人や場所の大切さ、そして自分自身を改めて見つめ直すきっかけとなります。そしてそのことは、身近なところから大きなところまで、この世界をより良くしていくために大切な気づきを与えてくれるはずです。
感染症の拡大により、人と人とが直接つながる方法や、空間の共有に厳しい制限が設けられるなか、多くの人がいまこの世界を生きることに息苦しさを覚えるようになりました。しかし、いままでになかった方法や考え方で、新しい世界が形成されつつあるのも事実です。
この展覧会では、これから生まれる世界が、少しでも新しい可能性に満ちていくよう、主に当館が所蔵する多様な作品を通して、いまこことは違うもうひとつの世界とのつながりをご紹介したいと思います。
(美術館HPより)