2023年度 コレクション展1
〔常設展示室1〕いろいろな線
色彩と共に絵画の基本的な構成要素である線。古来より画家は様々な種類の線を用いることで、画面に奥行を発生させ、自身の感情を投影させるなどし、多彩な表現を試みてきました。今回の展示では、線表現に着目しながら当館所蔵の現代アート(10作家15作品)をご紹介します。
例えば、斎藤 義重(1904~2001)は、戦前から戦後にかけて日本の抽象絵画をリードした画家ですが、《カラカラ》(1936年、73年再制作)は日本における最初期の抽象絵画といえるもので、ナイロンの糸を一定の規則のもとで画面に張り合わせることで、線の集積が織りなす斬新な美の世界を生み出しました。
今年生後100年を迎える菅野 聖子(1933~88)は、1960年代に関西の前衛グループ「具体」の一員として活躍し、細かな線の集積による緻密な抽象絵画を描きましたが、詩や音楽や数学など広い分野への関心を反映させることで、独自の展開を遂げました。《母音頌》(1973年)は批評家ユンガーによる母音の働きを論じた文章に影響を受け描いたもので、幅6m以上の大画面におびただしい数の直線や曲線が規則性を伴って描かれ、静けさと饒舌さが同居するユニークな世界を創出しています。
また法貴 信也(1966~)は《無題》(2008年)において、具象と抽象の間をゆれる有機的な形態を二重線により軽やかなに描き出し、見る者に多彩な想像を促します。
戦前から2000年代までの日本のアーティストたちが描いてきた多彩な線表現の魅力をお楽しみください。なお令和4年度に新たに収蔵された作品の中から4作家による11点の作品も同時にご紹介します。
(美術館HPより)