本論文は、ブルキナファソの都市、農村での食文化を概観し、自然環境、食糧生産、都市化、人びとの移動など多角的に捉えることで見えてくる、複雑な食習慣の変化や食文化の変容を捉えることを、「ランドシャフト」という地理学の概念を援用して理解することを試みている。
以下、本論文の要旨を記載する。「ある地域の食文化は、食をめぐる環境や伝統、文化、生産、消費が総合的に作用し発出する。この食文化の捉え方を地理学の「ランドシャフト Landschaft」概念に当てはめ、「食のランドシャフト」としてブルキナファソの食文化を包括的に捉えることが本稿の目的である。
練り粥やモチにソースを添える西アフリカの食事体系において頻繁に使用される発酵調味料は、その原料となる植物が生育する気候帯、および植生に強く影響を受ける。その一方で、都市においては、その街区の居住民の出身地により、販売される発酵調味料が異なり、加えて「伝統的」な使用法とは異なる方法で発酵調味料が活用されている。こうした伝統的食文化を決定 づける食品使用の応用は、人びとの味覚や好みの変化の中で起こり、その文化的位置づけを変容させる。こうした環境要因と結びつきながら、その使用が応用されていくことが現在のブル キナファソの食のランドシャフトを形成する要因となっているのである。」