本発表では、はじめに冒頭に述べたようなアフリカのストリートアートや庶民のアートに見られる独自のイラストレーション文化や表象文化、そこで描かれる人物像やテーマ、メッセージ性などにも注目しつつ、次に新たな動きとして近年海外で活躍するアフリカ地域にルーツを持つ漫画家やアーティストがどのような文化表象・表現を開拓しているのかについて考察したい。
アフリカ文化、特にアフリカの都市文化の継承者である若い世代の作家は、自らの出身地であるアフリカの国や地域をどのように描くのか。西洋や日本などを舞台に作品を発表していくうえで、どのような「アフリカ」表象を求められ、また本人は求めていくのか。ヨーロッパや日本など海外で生まれた、あるいは生まれ育ったアフリカ出身の二世・三世の文化理解やアフリカに対する表現は、どのようなものになっていくのか。
本発表では、いくつかのインタビューをもとに海外経験やメディアなどの影響を受けて新たな表現を開拓している数人のアーティストに注目し、「アフリカ」やそれぞれの出身地域の表象にまつわる葛藤や、作家個人のハイブリッドなアイデンティティに注目して論じる。
本研究は現在まさに発展中・過渡期であるアフリカのコミックアート文化、漫画文化についてより理解を深めようという試験的な試みである。こうした試みを通し、アフリカ×コミックアートに関して今後の表象文化研究の課題や展望について、また人類学的アプローチやライフヒストリーなど異なる記述の方法の可能性について議論提起するのが、本発表のもうひとつの目的である。