北海道の火山性カルデラ湖である俱多楽湖(くったらこ)において,2013年~2016年間に計4回の冬季結氷状態を調べ,気候条件との関係を探った。俱多楽湖は毎年,12月下旬に湖水の全層循環が起こり,その後1月~3月に気象条件に応じた結氷現象が生じる。観測期間中,2015年は暖冬で凍結せず,2013年,2014年,2016年の冬は全面結氷期間がそれぞれ83日,52日,33日と2016年冬が比較的暖かかった。俱多楽湖では,1978~2019年における1~3月平均気温の上昇率は0.0280 ℃/年(信頼度水準97.0 %)と見積もられ,この上昇率に基づく湖氷の成長・融解への影響が検討された。ここでは,全面結氷後の雪・氷・水の三層における熱収支を考慮した1次元モデルを適用し,湖氷の厚さの時間変化を再現した。計算された氷厚は2013年と2014年で観測された氷厚とほぼ一致し,熱収支評価が正しいことが裏付けられた。氷厚に対する数値実験の感度を調べるため,10年後に気温が一様に0.28 ℃上昇するとした場合の氷厚計算を行った。解析の結果,2013年, 2014年, 2016年で平均氷厚がそれぞれ,9.1 %, 57.0 %, 83.3 %減少し,暖冬ほど薄氷化が強いことがわかった。