小林秀雄の「近代」批判―「批評」の成立とその展開―(その1)
『京都精華大学紀要』第16号
pp.203-218
日本文学界における最初の近代主義者・小林秀雄の思想形成について論じたもの。小林が正当な近代主義を身につけ得たのは、恋愛の中から「他者」認識を獲得したためであった。小林はこの「他者」認識から、初めて「批評」という視点を確立したのである。これはそのまま、小林に日本近代への批判的な視点をもたらす。その成果が「私小説論」であった。しかし、1930年代後半を境に、小林は現実の社会問題から逃避し始める。問題意識は後の世代に残されたことについて論じた。