中村光夫の近代主義―「社会変革」としての文芸批評―(その1)
『京都精華大学紀要』第20号
pp.257-276
小林秀雄の正統な継承者として位置づけられる中村光夫の思想形成について論じたものである。中村は極めて「日本的」な家庭に育った。それ故、かれはその外に出ることを強烈に願うことになる。外交官として「逃亡」をたくらむ中村の方向を変えたのは小林秀雄であった。当時、プロレタリア文学にどっぷりと浸かっていた彼は、小林の影響から、批評という場で現実と格闘する立場に「転向」する。したがって、中村光夫の批評とは、そのまま社会変革の一方法であったのである。