学術論文・紀要

氏名 姜 竣
氏名(カナ) カン ジュン
氏名(英語) KAN Jun

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論文名

ポピュラー・カルチャーは誰のものか

単著・共著の別

単著

発行所、発表雑誌(及び巻・号数)などの名称

『城西国際大学大学院紀要』第14号、城西国際大学

該当頁

 

発行年月

2011年3月

編者・著者名

 

概要

筆者はこれまで、日本における紙芝居とマンガ史の調査研究に従事し、表現と思考における絵と音声と文字の相互作用について、メディア論ならびに表象文化論に依拠しつつ考察を進めることで、人類学のコミュニケーション研究と民俗学の口承文芸研究における口承と書承(声の文化と文字の文化)の比較研究に新知見を加えてきている。本論文のテーマは、口承から書承への移行やメディアの技術化、さらに商品化の進展が、ポピュラー・カルチャーの利用や所有のあり方をいかに変容させるかということである。まず、街頭紙芝居と貸本漫画の調査研究に基づき、紙芝居における「鬼太郎」物語のバリエーション、そして、紙芝居から貸本マンガへ移行する際に現れた複数の異本を比較しつつ、「鬼太郎」物語の原形や真贋をめぐる問題を分析した。予めテクストされた物語を持たない紙芝居における創作は、音声言語によるイメージの連鎖や観客の反応に負うところが多く、それゆえ、街頭紙芝居においては異伝(ヴァリエーション)の集積そのものを一つの物語と呼ぶほかない。こうした紙芝居に特徴的な口承性は、マンガに移行する過程で表現の技術と作者性の変化により、本質的で根本的な変容をこうむることになる。そして、現代日本において、マンガ読者の意識やマンガ批評の方法が<ことば>ないし<テクスト>中心化し、また、マンガやアニメなどの受容がマニアとメジャーに二極分解したために、ポピュラー・カルチャーの利用や所有はいっそう複雑な問題になりつつある。さらに、技術メディア時代のポピュラー・カルチャーにおける作者性や所有権というテーマにも取り組んだ。とりわけ、マンガにおける著作権問題、ディジタル著作権やネット上の創作をめぐるトラブルなどを事例に、民俗学の伝承論や人類学のコモンズ論、カルチュラル・スタディーズの権力論、クリエイティブ・コモンズに関する議論を紐解きながら、文化的なコモンズとメディアの技術化のかかわりあいについて考察している。

査読の有無