2007年には、「VOCALOID2」のキャラクター・ボーカル・シリーズ(クリプトン・フューチャー・メディア)の第一弾として「初音ミク」が発売されるにおよび、同年にサービスを開始したインターネット上の動画投稿サービス、ニコニコ動画を主な発表の場として、作品の投稿が始まる。その後、これは大きな広がりを見せ、インターネット上のみならず、現代歌謡のさまざまな領域に影響を与え、現在では、20代~30代の若者を中心に広く指示を受けるにいたっている。本報告では、ソフトウェアによってつくられ、機械によって歌わされたこのうたが、かくも多くの現代の若者のこころを捉えた理由を考察することを通して、このうたの登場を、現代におけるうたの発生としてとらえようとする試みである。