本稿では従来「いじめの重大事態」などの場で、これまで「学校の危機対応」として取り組まれたことを「統計的」「評判リスク管理的」「訴訟リスク管理的」の3つの観点から整理した。ただ同時に、この3つの観点からの「危機対応」は、いずれも「事態の沈静化」として教育行政当局にとっては必要な対応かもしれないが、いじめの重大事態を引き起こした学校の教育実践の見直しにはつながらないこと。その上で、あらためて本稿では、重大事態の起きた学校の教職員の子ども理解を含む教育実践の再検討など、教育学的な議論を調査・検証作業や再発防止策の実施などを通じて積み重ねることが大事であることを主張した。