本稿では中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(2021年)が提案する「公教育のデジタルトランスフォーメーション」(公教育のDX)が、子どもと教職員の関係をどのように変容させていくかについて、高校地歴科「歴史総合」の授業実践例などを紹介しつつ考察したものである。特にICTを活用した「個別最適な学び」の推進が、子どもにとっては能力主義的な教育の徹底をもたらし、子どもたちの分断を促し、「協働的な学び」の実現をかえって阻害しかねない恐れがあること。教職員についても「スタディログ(学習履歴)」や研修履歴の集積を通じて、働き方改革の名の下でより強く「管理」される危険性があること。この2点を指摘した。