小論は、京都の家具メーカー二葉家具工業での調査を通じて、地域中小企業においてモダンデザインがどの様に受容され、製品開発がなされていったのかを明らかにすることを目的としている。
二葉家具工業は、1921年に室内装飾業を請け負う大槻商会として創業し、1943年に二葉工業として事業登録する。1949年に店舗を構え、注文生産だけでなく店頭販売を始めた。
京都会館の食堂内装業務をきっかけに、山本敏郎(稲次敏郎、1924-2009)が1964年に設計顧問となり、専任デザイナーとして谷本依子(1942-)が採用され、オリジナル家具の生産が始まった。
北欧モダンへの関心は水之江忠臣のアドヴァイスによる。1975年、二葉家具工業はフィンランドの家具メーカーArtekの国内最初の総代理店契約を結ぶ。新たにデザイナーとして採用された村田真己(1952-2010)は、北欧モダンを研究し、量産家具の品質向上と座り心地の改善といった様々なデザインアプローチを試みた。
以上の経緯をふまえて、量産家具におけるデザインの可能性について、考察したい。