本稿の目的は、人文学の概念の考究に向けて、明治期以降の国語辞典における「人文学」という語の現れを語誌的に調査し、その結果を踏まえ語基(造語要素)としての漢語「人文」の重要性を浮き彫りにすることである。
考察のまとめとして言えることは、「人文学」という語は、ラテン語のhumanus を語源とする一連の言葉、英語ならば humanity、humanities、humanismといった概念の日本における哲学的な検討過程および翻訳語の形成過程において、2字語の語基(造語要素)としての二つの漢語(「人道」と「人文」)からの何らかの影響を受けながら生成された語ではないか、ということである。